高野山の参詣とともに、パイル織物で栄えた高野口
風格とともにどこか郷愁を覚えるJR高野口駅(和歌山県橋本市)。この高野口周辺に江戸・明治・昭和初期にかけていったんは栄えたものの、やがて潰え、そして平成、令和に向けて復活を遂げた伝統技術と産業がある。高野口パイル織物だ。
もともと高野口周辺では、江戸時代から農家の主婦たちを中心に、いわば農家の手仕事として織物を始めた。やがてその織物は、紀州藩のあと押しもあり、周辺農村の副業へと育っていった。その農村の副業を地場産業として開花させたのが、地元の豪商として知られる前田安助であった。
地元の豪商の創意工夫
18世紀末にスコットランドで生まれ、チェコからドイツへ渡り、日本には明治初期に持ち込まれた両面パイルの織物をシュニエール織という。このシュニエール織は2度の製織工程を経て表も裏も同じ多色柄を織れることが特徴で、前田はこの製織手法を改良して「再織」という手法を編み出した。
再織とは一言でいうと、いったん一方向に織り上げた生地を断裁し、再び別の方向から織り上げていく手法。独特の風合い、生地の強さや均質な伸縮性・耐久性などが評判を呼び、再織による織物業は高野口周辺の一大地場産業に育っていった。
その再織の生地が技術的に進歩、発展したものが高野口パイル織物である。明治期には、たとえば神戸などの外国商館からカーテンやテーブルクロス、壁掛などの注文を受けるようになった。そこからアメリカに輸出するようにもなり、高野口パイル織物の存在は国内はもちろんのこと海外にも広く知れわたるようになった。当時の列強諸国に「日本の技術、ここにあり!」と高らかに宣言したのである。
輸入品に気圧されて……
だが、高野口パイル織物は第2次大戦後の時代の移り変わりのなかで、衰退の一途をたどっていく。もちろん、地場産業のありがちな後継者難という理由もあっただろう。だが、最大の理由は安価な輸入品が大量に押し寄せ、価格競争力が維持できなくなったことだ。
1軒また1軒と織物業者が事業をたたんでいく。個人事業者は店じまいとして、企業は倒産として。高野口周辺でも、最盛期には数百社はあった繊維工場は海外移転なども含めて60社ほどに激減し、全体の売上高も最盛期の10分の1ほどに減ったという。
死中に見いだした活路
だが、その苦境にあっても、むしろ苦境だからこそ新たな活路を見いだしていく業者もあった。1980年代半ば頃から当時の先端技術を導入した産業の近代化が進み、あらたな再織として、高級ファッション・雑貨、インテリア用品などがつくられていったのである。
復活を果たした企業の1つとして、岡田織物という会社がある。
以下、同社ホームページの「沿革」から復活の経緯を探ってみよう。岡田織物は1932年に織物業を開業し、1970年には岡田織物として法人化した。ところが1983年には、会社を解散する。
1970年代に成長を期して個人事業から法人化したものの、1970年後半から1980年代初頭にかけて輸入品の増加、価格破壊の荒波をモロに被ってしまったのだろう。そして、その時期には、創業者の高齢化、事業承継の課題もあったはずだ。
いったん解散した岡田織物は、1989年にオカダテキスタイルとして創業し、1991年に岡田織物として再生を果たした。世間ではバブル景気に湧く時期に同社は事業承継を進め、いわば新創業を果たしたということができる。
その後、岡田織物では他社との協業に活路を見いだしていく。2002年には日本ハイパイル工業(本社・和歌山県橋本市)と共同でニューヨークI.F.F.E.生地展に出展し、海外向け輸出事業を始めた。
2010年にはショッピングサイトを開設し、以降、国内外での産業見本市や百貨店イベントなどに出展し、認知度を高めていく。地元産業組合(紀州繊維工業協同組合)が開催する展示会にも積極的に出展を重ねた。そして、国際的なハイブランドにフェイクファー製品を提供するサプライヤーとなるまでに成長した。
もちろん、地場同業者だけでなく、業界大手、設備機器大手などとの素材や加工機器設備などの共同開発を行う。そうした積極的な活動は国にも認められ、2015年には中小企業庁の「がんばる中小企業・小規模事業者300社」に選定された。
新創業を果たした岡田織物が行ってきたことは、高野口パイル織物の用途を婦人衣料に絞り、本物の毛皮を模したパイル織物の一種であるフェイクファーの製造・販売にこだわり続けてきたことだ。しかも、それを独自の発想で開発した特殊な加工機を使い、MADE in JAPANの技術として磨きをかけ続けてきた。さらに、高野口産地内縫製工場の協力を経て製品での販売も行い、「産地完結型企業」を目指してきた。
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February 09, 2020 at 04:51AM
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