岸に流れ着いた油を回収するボランティアら（12日）=AP
【イスタンブール=木寺もも子】インド洋の島国モーリシャス沖で商船三井が手配した大型貨物船が座礁してから25日、1カ月がたった。流出した油は生態系に大きな被害をもたらし、観光や漁業に依存する同国では将来への不安が高まっている。島全体への風評被害を懸念する声も上がる。
モーリシャス政府の危機対策委員会は24日、座礁して2つに割れた「WAKASHIO（わかしお）」の船体の大部分を計画通り海中に沈めたと発表した。被害の拡大や航路の妨げになるのを防ぐためという。環境保護団体「グリーンピース」は環境に悪影響を与えると主張するなど、異論も出ていた。
座礁した貨物船（11日、モーリシャス沖）=フランス軍提供・ロイター
現地に緊急援助隊を派遣した国際協力機構（JICA）などによると、ビーチに漂着した油の回収が進んでいるが、マングローブ林では難航している。オイルフェンスを固定するロープでサンゴ礁が破砕する「2次被害」も起きている。
国連によると、モーリシャスでは観光業や水産業が国内総生産（GDP）の3割超を占める。透明度の高い海やサンゴ礁などの自然を求めて、2019年は総人口（130万人）を上回る140万人の外国人が訪れた。
20年3月以降は新型コロナウイルスの影響で外国人の入国を厳しく制限しているため、流出事故による観光産業への直接の影響は限定されているものの、来年以降の観光客回復に影を落としそうだ。
油が流れ着いた岸は島の東側の一部にとどまるが、反対の西岸に面した場所でゲストハウスを営むクリスティさんは「モーリシャスの海全体が汚染されたというイメージが広がり、人が来なくなるのではないか」と風評被害を心配する。
油が漂着したマングローブ林を調べる日本の国際緊急援助隊（22日）=JICA提供・共同
事故を巡っては、7月25日の座礁から8月6日に油が流出し、環境緊急事態宣言を出すまでの初動が遅かったとの指摘がある。モーリシャス議会では野党議員が政府に対し「ただちに油の抜き取りに取りかからなかった政府の様子見が事態（の悪化）を招いたのではないか」と問いただす場面もあった。
モーリシャスの当局は18日、インド人の船長とスリランカ人の航海士の計2人の男を危険な航海をした疑いで逮捕した。
関係者によると、複数の乗組員が警察に対し「携帯電話の電波を拾うために陸に近づいた」と述べている。当日は船内で誕生日パーティーが行われていたという。こうした事実が事故とどう関わったかは分かっていない。
油の流出は国際的な注目を集める。近隣のレユニオン島を領有するフランス政府は油の拡散を防ぐ機材などを積んだ軍機と船舶を派遣した。政治・経済的関係の深いインドも沿岸警備隊や機材を送った。国連や英国からも環境専門家が到着している。世界中のメディアが連日、油が海に流れ出る様子を大きく報じた。
貨物船の座礁で流出した油がたまった海岸を清掃する人たち（14日、モーリシャス）=JICA提供・共同
堆積物で一部が死んでいるというモーリシャス沖のサンゴ（24日）=JICA提供・共同
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August 26, 2020 at 08:13AM
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モーリシャス座礁1カ月、観光産業募る不安 - 日本経済新聞
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