日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では映画『トップガン』で人気を博した、カワサキ GPz900Rの状況を中心にレポートする。
GPz900R:今後も永きに渡って人気銘柄になる初代忍者
各社のフラッグシップスポーツが1100ccクラス中心だった時代に、908ccと排気量では劣るものの、完全新設計された水冷4バルブでコンパクトな4気筒エンジンを搭載し、”最速”の座に就いたのがGPz900Rだ。
二輪車用エンジンとしては当時まだ非常に珍しかったサイドカムチェーン方式を採用。これによりエンジンを軽量かつナローに仕上げ、吸排気効率の向上も達成した。大排気量車でダイヤモンドフレームを採用するのもカワサキ初。メイン部は高張力鋼管製で、エンジンを強度メンバーとして活用する。
初代は’84年型で、北米仕様には「ニンジャ」のペットネームが与えられ、これがニンジャの起源となった。’86年に公開され、その年の全米興行成績1位および翌年度の日本洋画配給収入1位を記録したアメリカ映画『トップガン』で、主演のトム・クルーズ演じるマーヴェリックの愛車として登場すると、ニンジャ人気はさらに高まった。そして’90年代には、”漢・カワサキ”を象徴する硬派なモデルの代表格になる一方で、カスタムベース車としても非常に高い支持を集めた。
’03年型まで生産されたが、それでも生産終了から20年近い。人気度も考えると、今後の値上がりは必至か……。
GPz900R 各年式のポイント
1. ’80sモデル:初期はフロント16インチ
一般ユーザー間でもA1~16の型式で年式が表されることが多い。’93~’97まではA10が継続され、それ以外は1年ごとにひとつ番号が上がる。初代開発時はタイヤサイズの定番が決まる過渡期にあり、A1~6まではフロント16インチ/リヤ18インチだった。
トップガンはA2
映画「トップガン」に登場したのは’85年型(=A2)。ただしアンダーカウルや各部ロゴが廃され、GPz750R専用色に塗られていた。
2. ’90sモデル:前後17インチ化
16年間でもっとも大きな変更を受けたのはA7。前輪が17インチ化され、前後ともタイヤがワイド化された。前ブレーキキャリパーは片押し1ポットから対向4ポットとなり、フロントフォークも刷新。その他、変更は多岐にわたる。A8で国内仕様登場。
3. 最終仕様:6ポット&ラジアルタイヤ
A12では、フロントブレーキキャリパーが対向6ポットに。リヤショックがガス封入式となり、リンク比が変更され、タイヤはラジアル化された。国内仕様は、このまま’02年まで生産された。海外向けはマレーシア仕様のみで、A16が最終型となった。
GPz900R:ファイナルエディションやフルチューン車が平均価格を押し上げ〈実例物件サンプリング〉
- 相場:110万円前後(約32万~250万円)
- タマ数:多い
初代登場から36年も経つが、最終型からだとまだ17年。’90年代後半あたりでも根強い人気があったことから、生き残っているタマ数はまだ多い。検索サイトのグーバイクでは全国125件の中古車情報がヒットした。平均値だと約110万円だが、中央値は約93万円。走行距離が多めな個体が中心とはなるが、70万円以下で狙えるタマも豊富にある。A6以前でノーマルに近いと、だいぶ安い!
サンプル1:通常仕様の場合
GPZ900Rの中古車では珍しいフルノーマル車。走行距離は、100万円以下のタマでは平均的なレベル。目立つキズはないとのこと!
サンプル2:ファイナルエディションの場合
ファイナルエディションだけに絞ると、11台の平均価格は約173万円。こちらは、KeePerコーティングまで施された走行少なめの美車だ。
サンプル3:コンプリートチューン車の場合
6月時点の最高値。ACサンクチュアリーの「RCM351 New TYPE-R」というフルコンプリートカスタム車で、ブレーキはさらにチューン済み!
GPz750R:通常流通では絶滅危惧種か
- 相場:40万円前後(28万~50万円)
- タマ数:極少
日本国内では、’91年まで750cc超の正規販売が自主規制されており、900のエンジンをボアダウンした兄弟車となるGPz750Rがラインアップされたが、逆輸入車である900のほうが圧倒的に高い人気を誇った。
サンプル:綺麗でもまだこの価格
GPZ900Rがカスタムベース車に大人気だった’90年代でも、ナナハン中古車は安いままだった。そして900がプレミア化した現在でも、その傾向に変わりはない。ただし中古車のタマ数はグーバイクでわずか5台と、もはや絶滅寸前。定番のバンス&ハインズ製フルエキ &アンチノーズダイブキャンセルを施している。
空冷GPz系はプレミア価格の扱いに
GPz900Rで水冷化される以前の空冷GPzシリーズは、絶版車ブームだった’90年代後半、すでに人気が高まっていた。当時ナナハンはターボ以外なら手が届きやすかったが、現在も平均価格は75万円(ASKを除く)と、その傾向にある。ただしグーバイクでのタマ数は10台以下だ。750ターボは8台で平均価格約175万円、GPZ1100は12台で平均約156万円と、完全に高嶺の花だ。
サンプル1:’83 GPz1100
GPZ900Rの直前に最速を誇ったモデル。燃料供給はインジェクション。この中古車は、エンジン好調のガレージ保管車。納車時の整備内容を選べる。
サンプル2:’84 750ターボ
’80年代前半には、バイク界でターボブームが起こった。750ターボはその最後発。この中古車は米国アラスカ州で眠っていたフルノーマル車とのこと。
●文:田宮徹 ●販売車両画像提供:グーバイク ●取材協力:グーバイクおよび各バイクショップ
※本記事の内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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August 09, 2020 at 06:00AM
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