【ワシントン=河浪武史】米中両国は「第1段階の合意」に正式署名し、貿易戦争は休戦に入る。1年8カ月の貿易交渉では「6年で1兆ドルの輸出入増」や産業補助金の停止などを協議したが決裂。中国は人民元安で揺さぶりをかけ、懸案を棚上げする暫定合意案が2019年9月に浮上した。トランプ米大統領は景気悪化を恐れて一時休戦を選択。中国は産業政策の抜本見直しを免れた。
最初の衝撃は18年3月。トランプ米政権は500億ドル分の中国製品に、大統領権限で制裁関税を課すと発表。ナバロ大統領補佐官(通商担当)は、中国のハイテク産業育成策「中国製造2025」を名指しし「国際ルール違反だ」と強調。制裁理由も「中国の知的財産権の侵害」とした。
5月に訪中したムニューシン財務長官は(1)モノの貿易赤字(3800億ドル)を2千億ドル減らす(2)中国製造2025の補助金停止(3)輸入関税の大幅下げ――を突きつけた。
同年5月の第2回協議では、一時的に「休戦」が成立する。中国は農産物、航空機、半導体などを大量購入すると持ちかけ、ムニューシン氏は「制裁関税を保留する」と表明。実は中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席がトランプ氏にひそかに電話し緊張緩和を働きかけていた。
ただ、ここから主役はライトハイザー米通商代表部(USTR)代表に代わる。短期合意に反発し、ムニューシン氏の「休戦宣言」の翌日に「技術移転やサイバー攻撃の問題はさらに重要だ」と公然と反対声明を発表。北朝鮮問題で中国の協力を得られないと判断したトランプ氏も一転して関税発動を表明し「休戦」は10日で終わった。
18年7月には米国が制裁関税を正式発動し、中国も報復措置を課して貿易戦争が始まった。8月には米国が関税第3弾の検討を表明。泥沼のチキンレースに突入した。
中国はここでも米国製品の大量購入で貿易戦争を打開しようと動く。18年冬時点で米中は「中国が6年間で輸入を1兆ドル増やす」という大型の取引を協議。12月にはトランプ氏と習氏が会談して「90日で貿易問題を打開する」と決め、解決へ動き出すかに見えた。
こじれたのは、首脳会談の当日にカナダ当局が米国の要請で通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)副会長を逮捕したためだ。トランプ氏は「あらゆるカードを貿易交渉に使う」と公言。知財、通貨政策、補助金、技術移転、サイバー攻撃を一体解決する「包括合意」を米国は要求した。
交渉役はライトハイザー氏に代わり、協議は米国ペースで進みかけた。ただ、19年5月には「90%超で合意していた」(ムニューシン氏)文書が一転破棄される。中国側の交渉役だった劉鶴副首相に、共産党政治局が「譲歩しすぎだ」と反対したためだ。トランプは激怒して制裁関税第4弾の発動を表明する。
そのトランプ氏が軟化せざるをえなくなったのは、米景気の変調だ。19年夏には米製造業の景況感指数が50を下回って「不況」に転落。人民元は11年ぶりの安値となり、市場は「中国当局が米国に対抗するため通貨安を容認している」とみた。ウォール街につながるクドロー米国家経済会議(NEC)委員長ら穏健派は、景気リスクをトランプ氏に説いた。
制裁関税第4弾はスマートフォンや衣服など消費財が多く、発動すれば経済はさらに傷む。トランプ氏は8月末、訪問先のフランスで「中国と交渉を再開する」と表明。20年の選挙前に景気を底上げするため、9月には対中輸出の拡大を先行する「暫定合意」の検討に入った。
10月にはすぐさま中国と暫定合意したが、それは「5月時点で既に折り合っていた分野ばかりだった」(米中交渉筋)ためだ。貿易拡大策は中国が国内の需要を積み上げて「2年で2000億ドル」で落ち着いた。当初の「6年で1兆ドル」からは後退し、貿易赤字の削減幅も2000億ドルから1000億ドルに半減した。
ナバロ氏だけは最後まで中国との「第1段階の合意」に反対した。「制裁関税第1~3弾を発動しても米景気は堅調だ」とするデータをまとめて関係者に配ってまわり、トランプ氏にも関税第4弾の強行を求めた。
15日、合意文書に署名したトランプ氏は「公約を守った」と誇ったが、目の敵にしてきた「中国製造2025」には言及しなかった。習体制は補助金や国有企業の改革を免れ、トランプ氏が求めた習氏との首脳間の文書署名もなくなった。
トランプ氏は署名式でライトハイザー氏ら政府高官をねぎらった。「歴史的な合意だ。ピーター(ナバロ氏)はいるか。君だけは少し意見が違ったようだが。ホワイトハウスにはいろんな人材がいる」。ナバロ氏はそう声をかけられ硬い笑顔を浮かべるしかなかった。
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