新型コロナウイルスは、現在も生活やビジネスに大きな影響を及ぼしています。緊急事態宣言こそ解除されましたが、第2波、第3波に備えた新しい生活様式が推奨され、人々の働き方にも同様の変化が求められています。在宅勤務(テレワーク)はすっかり浸透し、オンライン会議も当たり前になりました。
それでは新型コロナと共存する「ウィズコロナ時代」において、経営者は従業員の健康管理をどのように考え、対応していけばよいのでしょうか? この連載では「ウィズコロナ時代の健康経営」と題して、ビフォーコロナと比較しながら、これからの健康経営に求められるものを明らかにしていきます。また、ウィズコロナ時代に必須となる「遠隔での健康管理」に関しても、先進企業の事例を参考にいま学ぶべきポイントを探っていきます。
そもそも健康経営とは?
まず、新型コロナウイルスが社会に大きな影響を与える前の“ビフォーコロナ”において、健康経営がどのように考えられていたかを見ていきましょう。
そもそも健康経営とは「従業員ヘの健康増進の取り組みが、将来的に収益性などを高める投資である」という考えのもと、健康管理を戦略的に実践する取り組みです。利益を創出するための経営管理と、生産性や創造性向上の源である従業員の心身の健康との両立を目指しているところがポイントです。
経済産業省は、健康経営に前向きに取り組む企業を「健康経営優良法人」として認定・表彰しており、2014年にスタートしたこの制度も6年目を迎えました。初回は493社の応募でしたが、19年は2328社と4.7倍の伸びを見せ、多くの企業が注目していることがうかがえます。
健康経営優良法人に認定されるための基準は、企業の健康経営への取り組み状況をふまえて、年々レベルアップしています。まずビフォーコロナの段階で、「健康経営2021では何が求められているのか?」を確認したいと思います。
「健康経営2021」で求められていたもの
20年3月に表彰された健康経営優良法人認定にあたって重視された点は、健康経営のPDCAを回しているかどうか、でした。経産省の表現でいえば、「健康施策に広く取り組むだけでなく、PDCAを回し、自社の取組を評価・分析・改善」(経済産業省 第23回健康投資WG事務局説明資料1)していることです。
この傾向はさらに強まり、認定要件のうちの「健康増進・過重労働防止に向けた具体的目標(計画)の設定」が、19年までの「選択要件」から、20年は「必須要件」となりました。これが必須要件になった理由は、「目標設定は、PDCAのPにあたる基礎的な要件」だからだと説明されています。健康経営が、健康施策として何に取り組んだかという活動内容に加え、どのような成果を得たのかという結果を重視する方向へ移行していることが分かります。
よく陥りがちな健康経営として、なぜ健康経営を行うのかという理念がなく、重点対象者も設定されていない、取り組み自体が目的化した健康経営があります。このような健康経営では参加率も低く、改善結果は得られません。
今回の認定要件の改定は、上記のような健康経営を抑制するためにあります。ウィズコロナに関わらず、まずは基本通りの健康経営、自社の健康課題を正しく捉えて適切な目標設定を行う健康経営が求められているのです。
ウィズコロナで考えなくてはいけない健康課題
健康経営の基本を押さえた上で、つぎにウィズコロナです。ウィズコロナでは働き方が一変します。働き方が変われば、暮らし方が変わる。暮らし方が変われば、食事・運動・睡眠の生活習慣も変わる。生活習慣が変われば、気分やメンタルも変わる――ウィズコロナ時代では、いろいろな変化に一度に対応する必要があります。また、ビフォーコロナ時代に考えられていた健康課題も、別の課題に変わる可能性があります。今回、ウィズコロナ時代に考えるべき健康経営の課題を4つ挙げてみました。
- 継続的な感染症対策
- 在宅勤務等に伴う身体活動量の減少
- 全体としてのメンタル不安の増加
- 在宅勤務(テレワーク)における健康管理・健康施策の難しさ
1、継続的な感染症対策
ウィズコロナにおいて、継続的な感染症対策は必須です。職場の定期的な消毒や、居室・会議室での換気、マスクや消毒液の常備など、基本的な感染症対策は、継続的に実施する必要があります。
また、今後の第2波、第3波のことを考えると、感染リスクの高い方(持病を持っている方や生活習慣病の方、重症化の恐れのある方など)をあらかじめリストアップし、すぐに対策が取れるように準備しておくことが大切です。第2波、第3波を想定した十分な感染防止対策、これがウィズコロナの必須課題です。
2、在宅勤務に伴う身体活動量の減少
コロナによる外出自粛は、従業員の活動量にも大きな影響を与えています。

リンクアンドコミュニケーションの調査では、1日の徒歩移動が「3000歩未満」という明らかに歩数の少ない層が、コロナ影響前の1月では約14%だったのに対し、自粛要請から増加し、緊急事態宣言後は約30%と急増しています。「通勤の減少」「仕事中の移動の減少」「外出自粛」などの在宅勤務が思った以上に身体活動の減少に影響を及ぼしていることが分かります。
ウィズコロナにおいては、しばらくは在宅勤務とオフィス勤務が混在する勤務スタイルが予想されます。しばらく在宅勤務を行っていた方々の中には、歩数減少などの身体活動の減少から、体力の低下や体調不良、持病の悪化などを起こしている方もいるかもしれません。在宅勤務による身体活動の減少リスクへの対策を行いながら、オフィス勤務に復帰した方々への健康課題にも対応することが求められています。
3、メンタル不安の増加
新型コロナは人々のメンタルにも影響を及ぼしています。緊急事態宣言後、就業者6302人を対象にメンタルに関する調査をしたところ、全体の44.7%の人が何らかの「メンタル不安」を感じていることが分かりました。
メンタル不安は、働き方によっても異なります。まず「フルタイム」「パート勤務」「休職中」といった勤務形態の違いでは、フルタイムの勤務の方が42.7%と全体平均を下回ったのに比べ、パート勤務の方は46.3%、休職中の方は48.9%と、全体平均(44.7%)を上回りました。仕事の不安定さが、メンタル不安により影響を与えている結果になっています。
次に、労働時間との関係です。
フルタイム/パート勤務、在宅/出社勤務に関わらず、緊急事態宣言後に「労働時間が増えた」方の「メンタル不安」が全体と比べて高い結果になっています。
そもそも、未知のウイルスの流行で前代未聞の緊急事態宣言発表という、誰しもが平常時の心理状態ではいられない状況です。それに加えて、労働時間が増えることで、心にゆとりが持てなくなっているのだと推測できます。
ウィズコロナにおいては、在宅勤務、オフィス勤務が共存する中で、在宅で対応できなかった業務が積み残されているケースも考えられ、さらに労働時間が増えることも予想されます。一方で、在宅勤務を快適に感じた従業員にとっては、出勤を伴うオフィス勤務をストレスとして感じる方もいるように思われます。両者のメンタルをどうケアしていくかも、ウィズコロナ時代の課題の1つです。
4、在宅勤務(テレワーク)における健康管理・健康施策の難しさ
社員の健康状態は、出勤していれば顔色を見るなどして上長が健康状態を確認することができました。しかし、在宅勤務では社員の健康状態を感覚的に把握することが難しくなります。
また、ビフォーコロナにおける健康施策といえば、「健診結果から問題点を把握」「産業医や保健師との面談」「健康セミナー」「ウオーキング大会などの健康イベント」「社員食堂の健康メニュー」などでした。しかし、現在多くの企業においては「定期健康診断の延期」「リアル面談ができない」「リアルイベント・セミナーの中止」「社員食堂の制限」など、今までの健康施策が打てなくなっています。
ウィズコロナにおいては、従来の会社内での取り組みから、家庭も含めた取り組みへと変更する必要が出てきます。健康経営の課題である、食事・運動・睡眠などの生活習慣の改善や、リラクセーションなどのメンタルケアを、会社+家庭で実践できるような対応や、従業員自身によるセルフケアを支援することが求められているのです。
以上、連載第1回では、コロナ以前から取り組むべき課題とあわせて、ウィズコロナ時代に解決すべき課題を見てきました。どの課題も全ての企業において早期に取り組むべきものです。次回はこれを踏まえ、「“新しい生活様式”での健康経営」と題して、在宅勤務(テレワーク)とオフィス復帰が共存するなか、どのような対策をとっていくべきかを考えていきます。
著者プロフィール・渡辺 敏成(わたなべ としなり)

リンクアンドコミュニケーション代表取締役社長。一橋大学商学部卒業後、味の素にて商品開発・マーケティング、ケアネットにて医師向けコンテンツ事業の統括を経て、2002年にリンクアンドコミュニケーションを創業。『世界中の誰もが、自然に健康になれる社会を創る』をミッションに掲げ、ライフログを活用したデジタルヘルスの進展を目指す。全国の企業約6000社以上の健康経営をサポートしている。
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