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産業春秋/弘道館の梅 - 日刊工業新聞

「市内の方が幾分、開花が早いんですよ」―。梅まつりでにぎわう水戸で、地元の人にそう聞いた。なるほど直近の20日の開花情報は偕楽園66%に対し、水戸駅にほど近い弘道館が80%。

江戸期の水戸藩は特異な存在だったそうだ。徳川御三家の一角だが、石高は他の2藩の半分強。しかも水戸の藩主だけが常に江戸詰めの「定府」で、将軍目代の格式のため高い出費を強いられた。

水戸城は質素で、尾張藩の名古屋城や紀州藩の和歌山城のような天守もない。9代藩主の徳川斉昭(なりあき)は三の丸の屋敷を取り壊し、国内最大級の藩校・弘道館を開設して藩士を厳しく育成した。そこに自らが好んだ梅の木を数多く植え、これが後に名物となった。

現代ならさしずめ、低収益で営業外費用に圧迫された企業のトップが、幹部教育と新製品投入で局面打開を図ったようなもの。地元の人は今も斉昭を尊敬し、伝統の『水戸学』を誇る。

今月4日には募金による水戸城大手門の復元も完成。3月29日までの梅まつり期間中、市民が交代で無料ガイドを務め、建学の精神を刻んだ石碑や吉田松陰の自筆漢詩、最後の将軍・徳川慶喜の謹慎所など弘道館の魅力を伝えてくれる。馥郁(ふくいく)たる梅の香と共に楽しむのも一興。

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February 24, 2020 at 03:00AM
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