ドイツでは医療保険の対象にもなる「クアオルト」とは?
※記事トップの画像は上山市クアオルト推進室提供
「クアオルト」という言葉は、初耳の人が多いかもしれない。ドイツで「療養地・健康保養地」を指し、クアオルトで行われる自然療法は医療保険の対象というからちょっと驚く。
ドイツの一部のクアオルトでは心臓病のリハビリや高血圧の治療法として、地形や風など自然の要素を活用したウオーキングが行われている。山形県上山市では市民の健康づくりと交流人口拡大を兼ねて、この気候性地形療法を日本で初めて取り入れた。2008年前にドイツ・ミュンヘン大学の監修のもとウオーキングコースを整備したところ、参加した市民の医療費は減少傾向になったというデータもある(※1)。
この療法を基に、日本に合わせてアレンジしたのが「クアオルト健康ウオーキング」だ。日本では医療保険の対象にはならないが、健康寿命の延伸やメンタルヘルス向上などが期待されている。2020年度末までに全国20の自治体と地域が導入。自然豊かなコースのほか、東京・日比谷公園で体験イベントを開催したり、名古屋市・白川公園でも体験できる。
とくにコロナ禍において免疫力アップが求められる中、歩くだけで健康づくりができるなら手軽でうれしい。…と思っていたのだが、どうやら「クアオルト健康ウオーキング」はただ歩くだけではないらしい。どんな秘密があるのか、まちにもたらす変化は? 株式会社日本クアオルト研究所の代表、大城孝幸さんに話を聞いてきた。
※1 出典:上山市 医療費解析レポート 大阪大学大学院 医学研究科 バイオデザイン学共同研究講座 山下和彦、山下知子
※クアオルト、気候性地形療法は登録商標
クアオルト健康ウオーキングの肝は「がんばらない」
下/コースごとに用意されたポケットサイズのマップ。記録表に心拍数や血圧、体表面温度を記して自分の体調と向き合う
いざウオーキング!とはりきり過ぎて、ヨレヨレに疲れたり、足を痛めては意味がない。
クアオルト健康ウオーキングは、大学や医療関係者が医科学的な検証をしたもので、運動効果を高めるポイントがいくつかある。
「歩くときのポイントは『がんばらない』『冷たくさらさら』です。途中で心拍数を測り、『160-年齢』という目標心拍数を目安にして、全速力の55~60%という運動強度で歩きます。さらに、体表面温度を面平均2℃下げると持久力が増大するという研究を基に、袖をめくったり、風で汗を乾かしたり、沢の水に手をつけ、やや冷える状態をキープ。物足りない?と感じる程度でも運動効果があります」(日本クアオルト研究所 大城さん)
ほかにも、傾斜地を歩くとつま先が上がり筋力がアップする、60%の運動強度で脳の血流が最大化するので頭がすっきりする…など、さまざまな研究成果が盛り込まれている。
運動強度が計算されたコース内には計測ポイント、ヤッホ!と叫ぶポイントなどがあり、約1.5~3キロのコースを1~2時間かけて歩く。コミュニケーションを楽しみながらの、まさにがんばらないウオーキングだが、運動効果を高める秘訣は専門ガイドの存在だ。
「クアオルト健康ウオーキングの専用コースと専門ガイドを例えると、自動車教習所と教官のようなもの。専門知識とリスク管理を学んだガイドの指導で正しい歩き方を学べば、家の近所や野山で自分なりに楽しめます。まちの各所に“同ウオーキングの自動車教習所”を設けて、安心・安全なウオーキングをもっと普及できるといいですね」
志摩市ではMaaS、岐阜市ではスマートシティと連携も
クアオルト健康ウオーキングは2020年度末で、20自治体・地域で69コースに広がっていく。ウオーキングという一見アナログな取り組みだが、MaaS(マース)、スマートシティ、自動運転といった先進のまちづくりと連携し始めている、というのが面白い。
ひとつの例が、三重県志摩市。65歳以上が4割近くを占めることから、市民の健康寿命を延ばす方策としてクアオルト健康ウオーキングを導入した。駅から離れたコースへの交通手段として、「MaaS(Mobility as a Service)」が検討されている。
2019年、近鉄と市のタッグで「志摩MaaS」の実証実験が行われた。例えば「横山展望台まで」と検索すると、相乗りバス・タクシー、船を含めた最適なルートが導き出され、予約までできる。今後MaaSが実用化されれば、クルマのない高齢者や観光客もウオーキングに親しみやすくなりそうだ。
もうひとつ、岐阜県岐阜市の例も紹介したい。人口40万人という中核都市では初の導入で、岐阜市長のリーダーシップのもと、市、医師会、大学、金融機関、地元企業、協会けんぽなどが一体となってクアオルト健康ウオーキングに取り組んでいる。「金華山・長良川・岐阜公園コース」「百々ケ峰・ながら川ふれあいの森コース」をつくり、岐阜の魅力発見と市民の健康づくりという2つのメリットを目指しているそうだ。
さらに岐阜市では、IT企業や大学と協同するスマートシティ構想とこのウオーキングをつなげる計画もある。
「自動運転のクルマでコース出発点へ向かい、ウオーキングしながら観光地を巡る計画や、ウオーキングの効果をビッグデータで解析して医療施策に役立てたいとも考えられているそうです」と大城さん。市街地再開発エリアにクアオルト拠点をつくる予定もあり「『健康』の視点を生かしたまちづくりは今後増えていくと思いますね」と笑顔で話す。
テレワークが増える今、「都心でクアパークをつくるのが夢」
下/街中の公園でも土の道や階段を使って運動効果を高められる。名古屋・白川公園で体験を実施(問合せは日本クアオルト研究所)
クアオルト健康ウオーキングは、山や海だけでなく、街中の公園でも楽しめる。ひざの負担が少ない土の道を探し、傾斜地や階段を意識的に取り入れるのがポイント。在宅勤務の休み時間にウオーキングをすれば、運動不足を解消できて頭もすっきり!(実施する時は、検温などの事前の体調チェック、十分な距離の確保、マスクなど感染予防と熱中症にも留意を)
「都市公園に、散策路やレストラン・カフェ、涼を取れる水辺があるクアパークを整備できれば、飽きずにウオーキングを続けられると思います」と大城さん。実際、アートパークとして名高い北海道・モエレ沼公園を共同設計した建築家・堀越英嗣氏や北海道大学の准教授らと、日本版都市型クアパークについて構想を練っているそうだ。
「都市には情報があふれていると思われがちですが、自然の中のほうが音・香り・触感を含めて情報が多いんです。都市公園に木造の建物をつくって緑化や木化を進め、ウオーキングで健康づくりを楽しんでもらいたいですね」
クアオルト健康ウオーキングは高齢者向けだけでなく、企業のメンタルヘルスや、健康保険組合の医療費削減など、さまざまな課題を解決できそうなプログラム。都心でも気軽にできれば、働き盛り世代の新しい健康習慣になるかもしれない。
取材協力/日本クアオルト研究所
http://www.kurortwalking.com/
2020年 07月23日 11時00分
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July 23, 2020 at 09:00AM
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